2007.09.10 (Mon)
「福井は英語先進県?センター試験リスニングで連続1位」の理由を探る
実は英語先進県? 二〇〇六年の大学入試センター試験から導入された英語のリスニング試験で、福井県は都道府県別受験生の平均点が二年連続一位となっている。県教育委員会は「詳しい理由は分からない」と好結果に首をひねるが、県内でこれまで取り組んできた英語教育が実を結びつつあるようだ。
これまで取り組んできた英語教育が実を結び・・・とありますが、「これまで何を取り組んできたんでしょう?」と、教育委員会同様に私も首をひねりたくなります。日本で初めてヒアリングテストを実施したり、今は当たり前になってしまった外国語指導助手(ALT)を1977年に全国で始めて導入したりと、先進的な対策を率先して実行してきたことは間違いなさそうですが、
しかし県教委は「(六〇-七〇年代に)なぜ英語教育にそこまで力を入れていたのか、分からない」。
わからないのではなく、当時の人たちに先を見る目があったということではないでしょうか。ただ、冒頭でも書いていますが、もう少し別なところに福井県が1位となる理由があると感じているので、ちょっと勝手に推測してみました。
新聞報道からわかるデータというのは下記のとおりです。
〇六年一月に行われた英語リスニング(五〇点満点)の県内平均点は三八・七点(全国平均三六・三点)、〇七年は三五・〇点(同三二・五点)だった。リスニング以外も含めた英語合計でも〇六年が三位、〇七年が六位と高順位となった。
早速、全国版のデータを手に入れようと、あちこち調べたのですが、大学入試センターの公式ページをはじめ、都道府県の教育委員会や文部科学省のページにも掲載されていません。これまでもこのような数値が好評された形跡がないことを見ると、これはおそらく大手予備校等で実施している自己採点結果を集計したもの、もしくは、福井県が独自に高校生にアンケート集計をして計算したものと考えられます。ということで、自分で推測するためには入手できるデータが限られますが、とりあえず下記を使うことにしました。
1.高等学校の都道府県別進路別卒業者数(学校基本調査:文部科学省のページからDL)
2.平成19年度大学入試センター試験公表データ
1から得られるデータとしては、各都道府県別の大学進学率が計算できます。そうして出された大学進学率、
47%!高い!
いつの間に日本の大学進学率はこんなに高くなったんでしょうね。ただ、地域間で差があり、東北、山陰、九州方面では30~40%台が多く、逆に都市圏である関東、関西では50%を超えています。首都圏や関西圏では大学の数も多く、選択肢も広い。地元に国立大学が1~2と私立大学が数えるほどしかない地方よりも、選択肢のたくさんある都市圏の大学進学率がはるかに高いのは納得がいく話です。
で、福井に目を向けてみると、52.3%!
首都圏並みの進学率に驚きですが、東京や大阪といった都市圏から遠く離れた福井県でこれだけの進学率を考えると、教育熱心であることは間違いないようです。地元に大学がたくさんないというのも影響しているのでしょうか。
■気になるセンター試験の受験率
で、実は気になるのが大学進学者に占める大学入試センター試験の受験者の率。なぜこの数値が気になるかといえば、各府県ごとに母集団が微妙に違うのではないかという仮説を立てることで、先ほどの点数の差というのが出てくるのではないかという気がしたからです。(米国大学への留学のためのTOEFLでよく言われていますが、日本人は誰でも受験するから平均点が低い。他のアジアの国々は熱心に勉強している人たちが多く、その母集団の違いが日本のTOEFLの平均点を最下位に押し下げている!という意見です。事実かどうかは調べるすべがないですが。)
ということで、今度は、大学入試センターで公表されているセンター試験の受験者数。こちらは、卒業見込みの方のみを使います。というのも、先ほどの学校基本調査の大学進学率は基本的には現役の進学率だからです。ですから、先ほどの大学進学者数とセンター試験の受験者(現役)の比率から、大学進学者に占めるセンター試験の受験率を算出すると、、、
そうすると、今度は、岩手県、秋田県、山形県、群馬県、新潟県、富山県、鳥取県、島根県、佐賀県、宮崎県、鹿児島県といった、地方の県で90%近く、またはそれ以上の受験率となっています。
そして、福井県を見てみると、79%と実はそれほど高くありません。全国平均を計算すると76%なのですが、隣接する石川・富山が90%前後であることを考えると非常に低い割合です。
これは何を意味するのか。
推測の域を出ませんが、いわゆる地方というのは圏域に大学も少なく、選択肢がない。大学の数が少ないというのは私立大学の数が少ないということであり、極端な話、大学進学=国立大学といった構図も珍しくないのです。大学入試センター試験が私立にも採用されたとはいえ、その大部分は国立大学入試のために受験しているケースが圧倒的なはず。で、福井県が受験率が低いということの意味ですが、高校の方である程度の進路指導が徹底されているのではないか、という推測です。県内に大学が4つ(国立1、公立1、私立2)しかなく、県外の大学に行く=基本的に浪人が許されない土地柄(非常に保守的)であることもあり、センター試験を受験している層がかなり絞り込まれているのではないか、というのがひとつの推測です。
そして、これは意図的に絞り込んでいるにしろ、自然発生的に絞り込まれているにしろ、選択枝の多い都心部でも見られる傾向にあると思うのです。というのも、都心部では逆に選択肢があるからこそ、私立中心で受験する方々はセンター試験を受験せず、結果的にセンター試験を受験するのが国立大学受験者という選抜組的な集団になっている傾向ではないかという推測です。
このような推測に基づけば、福井県同様に、
1.大学進学率が高く(おおむね50%を超えるような地域)
2.センター試験の受験率が低い(70%台である地域)
この上記二つを同時に満たすような地域で、センター試験の成績がいいのではないか、という仮定をたててみます。すると、これらに該当する地域は47都道府県中下記の府県に絞り込まれてきます。
都道府県名 | 進学率 | セ試験受験率 |
東京都 | 56.2% | 77.13% |
神奈川県 | 51.8% | 71.82% |
福井県 | 52.3% | 79.36% |
岐阜県 | 50.1% | 73.37% |
滋賀県 | 52.1% | 73.49% |
京都府 | 58.4% | 57.42% |
大阪府 | 51.1% | 57.06% |
兵庫県 | 54.9% | 70.03% |
奈良県 | 54.1% | 73.16% |
都心部という枠をはずすと、岐阜県や滋賀県というのがもしかすると、福井県と似たような事情ではなかろうかと推測されるわけです。
と、ここまでいろいろといい加減な推測や仮説で進めてきたのですが、センター試験の都道府県別の成績が公表されていない現状で、これを確認するすべがないことに気がつきました。自分の頭の悪さにちょっとがっくりです(笑)
もし、予備校関係の方で、データをお持ちなら、これらの都道府県がどうなっているかというのを教えてください!
ニュースソース:
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20070906/CK2007090602046632.html








英語上達への近道→英脳人間への道

この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
「2003・都道府県別平均点表」を見せてもらっていろいろ考えさせられた。まずは、先生方の意識改革が必要ではないかと思う。
<ベスト10> 1東京、 2奈良、 3神奈川 、4大阪、 5京都、6群馬、7和歌山、8兵庫、9千葉、10埼玉
<ワースト10>38徳島、39岡山、40鹿児島、41鳥取、42青森、 43島根、44大分、45沖縄、46岩手、47宮崎